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歯科医院の相続 事業承継 M&Aの本質について。

医院を残すだけではなく価値を残すために。
歯科医院の事業承継は、一般的な中小企業の承継とは似て非なるものです。理由は明確で、院長に強く依存するビジネスだからです。この前提を理解せずに相続やM&Aを語ると、ほぼ確実に失敗します。
本記事では、歯科医院の承継を、相続・内部承継・第三者承継(M&A)の3つに分けた上で、表面的なメリットではなく、実際に意思決定で使える判断軸を分かりやすく説明します。
1. 歯科医院の承継が難しい本当の理由
歯科医院は全国で約6.7万施設と非常に多く、コンビニより多いとされる競争市場です。さらに後継者不在率は非常に高く、承継問題は構造的に避けられません。
しかし、本質的な問題は数ではなく、次の3点なのです。
① 売上が「院長個人」に依存している
患者は「医院」ではなく「先生」に通っているケースが多い。
つまり承継後に患者が残る保証はない。
② 医療と経営が一体化している
一般企業と違い、診療スキル=収益力。
経営だけ引き継いでも成立しない。
③ 無形資産の評価が曖昧
カルテ、信頼、口コミ、立地などが価値の中心だが、数値化が難しい。
つまり、歯科医院の承継は資産の引き継ぎではなく信頼の移転ということです。
2. 相続(親族承継)の本質
最も理想とされるのが、子どもへの承継です。
第三者では無く、安心感もあり患者からの安心度も変わるでしょう。しかし現実はそう単純ではないのです。
メリットとしてはまず、患者やスタッフの安心感が高いこと。親族承継という部分での患者の安心感。また、ブランドが維持されやすいというメリットがあります。
ですがここで出てくるのが実務上の問題。
子どもの勤務医経験が浅く、経営能力や実力が不足している場合、親のやり方を引きずることで経営としての成長が止まりやすくなります。
さらに見落とされがちなのが相続税と持分問題です。
医療法人(持分あり)の場合、評価額が高くなり、承継コストが想定以上になるケースもあります。
つまり本質は「どう継がせるか」ではなく、「継いだ結果、競合に勝てるかどうか」ということなのです。
3. スタッフ承継(内部承継)の落とし穴
勤務医や院内スタッフに承継するケースも増えています。
一見理想的ですが、ここには大きなリスクがあるのです。
よくある失敗
- いい人だから任せた結果、経営が崩壊してしまう。
- 資金力が不足してしまい借入過多に陥る。
- 人間関係の変化がスタッフの離職に繋がってしまう。
本質的な問題
スタッフは従業員としていくら優秀でも、経営者として優秀とは限りません。当たり前ですが、意外と意識されていない部分なのです。
また、価格設定が甘くなりがちです。
関係性を優先して相場より安く譲渡し、後から後悔するケースも後を絶ちません。
4. M&A(第三者承継)の現実
近年、歯科医院のM&Aは急増傾向にあります。
ですがその背景には後継者不足と、企業側の参入増加があったのです。
M&Aの本質的なメリットは、医院を存続できる、雇用を守れる、売却益を得られる、相続対策になるなど、魅力的なものばかりですが、ここでも誤解が多い部分です。
「高く売れる医院」の条件とは?
多くの人は売り上げで評価されると思っていますが、実際は違います。
評価の本質は「再現性」です。
具体的には以下の理由が再現性に直結してきます。
- 院長依存が低い
- 歯科衛生士が機能している
- 自費と保険のバランスが良い
- 患者数が安定している
- 立地が強い
逆に、院長ワンマン型は評価が下がる傾向にあります。
そして現実的な価格のリアル。
ここから分かるのは、売上=価格ではないということです。そして、「利益+継続性」で決まるという点です。
5. 新規開業 vs M&Aという視点
最近重要なのがこの比較です。
新規開業の問題点
初期投資が高騰する点や、患者ゼロからスタートする難しさ。そして人材確保の難易度の高さが挙げられます。
M&Aの強み
既存患者がいる点、既存の設備が整っている点、即収益化できるという点。
これらの理由が承継開業の増加と深く繋がっているんです。
6. 成功するための戦略
結論として、歯科医院の承継で重要なのは次の3つです。
① 早期に「出口」を決める
親族、内部、M&A。このうちのどれを出口として選ぶかで、準備やその先の利益率が大きく変わります。
② 医院を仕組み化する
院長依存から脱却する為の、衛生士主導の予防体制を作っておくこと。動きや取り組みを徹底的にマニュアル化すること。これだけで企業価値は大きく上がってきます。
③ 数字ではなく質を整える
患者の継続率や自費比率、スタッフ定着率は、単なる数字ではなく「質」です。
質がそのまま評価に繋がります。
まとめ
歯科医院の相続・事業承継・M&Aは、単なる引き継ぎではなく、患者、スタッフ、地域からの信頼を、次の世代へ移すプロセスです。
だからこそ重要なのは上記でも示したとおり、「誰に継がせるか」ではなく「継いだ後に成長できるか」なのです。
